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大雅荘ふたり作品展
茨城県合福祉会館 1Fギャラリー  17913(火)〜19(月)
岡崎勇二 「色紙絵」 
鈴木文近 「詩」 

ここに、一枚の新聞記事がある。
よみうり県南ニュース。590号である(2002126)。
「岡崎勇二彩画展」 
 水戸の県立図書館での個展案内と石岡市大雅荘(身体障害者施設)の概要が記載。 
プロフィールと創作風景と絵はがき作品集E集が載っていた。その頃体調を崩して気持ちがどん底の状態だった。ベッド上で創作活動をする、まだ見ぬ岡崎雄二さんの姿勢を凝視。落ち込んだ時に、この彩画展絵はがきと共に生きていったら、光が見えてきて萎えた気分が一変するかもしれないとおもった、その時の衝撃は今も忘れてはいない。直感ほど真実なものはない。絵はがきを求め、以来、作品達は裏切らずに元気を与えてくれている。
 その後、何度も各誌に掲載され、地域では、もう、有名人として親しまれている。 
描き始めて10年以上のキャリアの持ち主である。

読売朝刊・茨城版(2004613)。男性の施設でミニライブ
「脳性マヒの男性の詩に歌手おりはらさんが曲」 
その男性は、鈴木文近さん。詩を書き始めて10年以上と伺った。
「青空」「しゃぼん玉」の曲が、たくさんの大雅荘施設入所者の前で披露されて、大盛況と報じた。

 今回、このお二方の個展が開催されたのである。

14日(岡崎さん会場入り)に参加した。広い会場はゆったりとして、穏やかな空間が流れ、訪れる人を迎えている。岡崎さんにお目にかかった。いつ会っても貴公子で楽しい方。
色紙絵は「果物」「福寿草」「ざくろ」他、
20点。絵はがきが、A集〜H集まで5枚組で、「冬集」「夏集」は3枚組。新作I 集(シャクナゲ、からす瓜、松ぼっくり、ブルーベリー、葉ケイトウ)で合計、51枚の展示数である。新作絵はがきの原画は、途中で評判のよい絵と、入れ替えたようである(色紙が、メモと員数が1枚合わないけどいいか)。

 詩は、「いつまでも」「花火」「蝶」「砂時計」「しゃぼん玉」「桜」「綿帽子」「ありがとう」「青空」「何度でも」の10点。
 作者たちのHPが、ここまでのプロセスと準備、たくさんの人たちの無償の労力が関わっていたことを載せ、個展の概要をきちんと知らせて、大変助かった。

 色紙絵は、特に最近の作品にはドキッするようなインパクトがある。筆づかい、形、色彩に燃えるような息遣いを感じる。色紙絵を写真のようだといった人がいた。
 「そら豆」は、読売新聞朝刊2面の、長谷川櫂さんの詩歌コラム「四季」に掲載された「そら豆」と色彩が全く同じでびっくりした。「あさがお」(今回は展示されてないが)は倉嶋厚さんの「癒しの季節ノート」の写真と、そっくり。描く物をしっかりと見ていることと、本当に絵と向き合っている姿が作品に表われている。作品は、嘘をつかない。この辺りが彩画展の真髄ではなかろうか。そして、観る人たちに無言で伝わってくるものは、たゆみなく生きている前向き、そのものではないだろうか。筆はこびと色彩を見るたびに、何かを感じるのはこういうことなのだと、連日のお客さまはオーラを浴びて帰られたに違いない。
 緑の中の桃色、果物の光の表現などを得意とするような、作風も感じられる。
 新作絵はがき、I集の「シャクナゲ」は秀逸の出来栄えである。ピンクがとてもいい。

 19日(鈴木文近さん会場入り・最終日)に、二度目の参加をした。鈴木文近さん・通称チカさんのお知り合いがたくさん見えて、歓談、写真を撮り食事をして楽しかった。
 詩10編は、育まれた人への優しさ、嬉しさ、哀愁を、美しい日本語にのせて、余り有る。凡人には思い浮かばないような人の機微、物への問いかけ、大きく大きく羽ばたく作者の気持ちにおもわず拍手をしたくなる。何度も足を運んで詩の前に佇む人が増えたと訊く。圧巻は、全部自筆の「詩」であること。1枚ん百円もする色紙を大分ロスしたそうな。
 世界に一つしかない自筆だから、字自体がもう絵になって誰も真似のできない仕上がりになった。上手い下手の世界を超越したチカさんの精神(スピリット)がこめられた作品である。HPの日記からは想像しがたい詩。日記は、本人にいわせればジョークとのこと。

 たくさんの人たちを感動させ、たくさんの愛のボランテイアの協力で、一週間の個展は無事に終了した。14時からは(殆ど毎日)佐藤淑子の朗読講座があり、18日は佐和高校の生徒による朗読とピアノ演奏が、会場に華を添えた(二人の作者も会場入り)。
 最終日は、最後まで片付けられた作品たちを見届けようとおもったが、寂しくなって、途中で会場を後にした。

 彩画展は、鑑賞する人たちを育てている。育てられた一人として機会あるごとに作品にお目にかかりたいと、おもう。今回、色紙絵3点に、考えさせられる言葉が添えられていた。中に一点、考えていることが同じでびっくりした言葉があった。
 チカさんも、もう、今から自筆の練習をしているという。
実りあった今回の「大雅荘ふたり作品展」だった。お二人と大雅荘にかんぱーい!
 お二方から、案内状と終了した時点でお礼状を頂いた。感謝。
                     17・9・30 記  だいご よしえ